エンパワメント(権限移譲)とは? リーダーシップの取り方のロジックの基本!コールセンターの管理者層育成のベーシックスキルを紹介!!

エンパワメントとは?
エンパワーメントとは最近注目されている、リーダーシップのテクニカル技術のことだ。
目標を達成するため、メンバーに自律的に行動(自走)を促すための権限移譲の手法をさす。具体的にいうと自立性を高めてメンバーが自走する方法を支援することをさす。コールセンターにおけるリーダーやスーパーバイザーの育成にも共通する点が多い。詳しく説明していこう。
エンパワーメントの目的
エンパワーメントとは、empower からきている言葉で、「力を与える」「権限を与える」という意味だ。ビジネスにおいては「権限委譲」の意味合いで使われる。これまで上司が持っていた権限を部下に与えることで自律的な行動を促し、組織全体のパフォーマンスを高めることを目的としている。
エンパワーメントの由来
もともとエンパワーメントとは、20世紀のアメリカにおいて市民運動や先住民運動などの社会改革運動の高まりとともに提唱されてきた考え方だ。誰もが本来備えている能力を発揮できる社会を目指すという思想のもと発展し、のちに教育分野、介護・福祉分野などにも幅広く取り入れられ、個々の意思を尊重しながら潜在能力を引き出す考え方として普及していった。
ビジネスでは、従業員一人ひとりの能力を引き出し、企業の競争力を持続的に高める方法として注目を集めている。
エンパワーメントの意味~成功に導くためには
エンパワーメントを成功させるために必要な二つの枠組み
エンパワーメントを実践するには、二つの枠組みからプロセスを考察する必要がある。
一つ目は、「客観的な力を与える(=権限委譲)」
つまり、自らの判断で業務を遂行できる権限を与え、これが機能する環境をつくる必要がある。
二つ目は、従業員自身に「権限や能力があると自覚してもらう」
たとえ制度として権限を与えても、従業員自身が自信を持てなかったり意義を見いだせなかったりすれば、自律的な行動をとることはできない。従業員の心理的な障壁を取り除き、前向きな気持ちを引き出す動機付けもエンパワーメントを機能させる重要な要素になる。
役割と責任はセットで組み立てること
ではじめて有効となる。
エンパワーメントを成功させるには二つの枠組みをとらえ、実践することが必要になります。
エンパワーメントのメリット
エンパワーメントを取り入れるメリットは、次の五つが挙げられる。
意思決定が早くなり業務スピードや生産性が向上
エンパワーメントを行うことで、従業員は与えられた裁量の範囲内で意思決定が可能だ。上司のエスカレーションを待つことなく対応できるようになるため、業務スピードが上がり、生産性の向上につながる。
従業員自らの柔軟な対応により顧客満足度が向上
従業員が一定の権限を持つことで、顧客に対してより柔軟な対応ができるようになり、結果として顧客満足度の向上につながる。
例えば、顧客対応が売上や満足度に大きく影響するサービス部門では、顧客の要望に対して現場で柔軟に対応することが求められる。また、トラブルやクレームが起きた場合、現場で迅速かつ的確に対応できれば、顧客満足度の向上や信頼性の回復におけるリピーター獲得につながる。
当事者意識の醸成
自分自身で意思決定することは、意思決定する過程において当事者意識が生まれるとともに、なぜそれをやる必要があるのか、目的と理由を自分で考える力が身につく。
成功体験が蓄積されモチベーションが向上
上司の指示に従うだけのオペレーションと違い、自発的に考えて行動するエンパワーメントは従業員のモチベーションアップにつながる。成功経験が実績に直結するからだ。自身で創意工夫した取り組みが結果につながれば、仕事に対する意欲が増すだろう。
マネジメント能力の習得
エンパワーメントには、従業員の成長を促すというメリットもある。裁量権を与えられることで課題解決力やプロセスを考える力が磨かれ、結果として、マネジメント能力を身につけることができる。有望なリーダーを育成するうえでも、効果を発揮するといえる。
エンパワーメントのデメリット
エンパワーメントで懸念されるデメリットは次の2つです。
判断基準にばらつきが生じ、方向性や目的にずれが出る
エンパワーメントのメリットは、従業員が自らの判断で仕事を進められる点にある。しかし見方を変えると、判断基準にばらつきが生まれやすくなり、事業の方向性や目的がずれてしまう可能性があるといえる。
こうした事態を避けるには、判断基準を明確にし、事業方針に対する共通の認識を持てるようにすることが重要で、
ルールの可視化
定期的なカリブレーション
が必要だ。
トラブルが増加する危険性が増える
与えられた裁量権に対して実践できるスキルが追いついていない場合、現場でトラブルが増える可能性がある。
従業員の能力開発を行いながら段階的に権限委譲を行うようにしよう。
エンパワーメントの実践手順
ここでは、実践する際の手順と注意点を整理していきます。
エンパワーメントの企業風土の構築
エンパワーメントは、全社を挙げて取り組まなければならない。経営者や人事担当者がエンパワーメントを推し進めたくても、従業員や管理層に同意していない人がいればうまくいきません。企業の方針を明確に宣言し、全従業員が共通認識を持てるよう
企業風土の構築
文化の醸成
に意識して取り組もう。
目標設定
次に目標を設定します。エンパワーメントでは高めの目標を置いて、権限を生かしながら達成するプロセスを経験させることが大切だ。なぜその目標を設定したのか期待値を説明し、従業員の共感を得ることも意欲を維持するうえで重要といえる
権限委譲
目標を達成するために必要となる権限を委譲します。裁量の範囲を明確にし、認識のずれが起きないように注意しよう。
上司による定期的な確認
上司は、部下が目標達成に向けて自発的に自主的に行動しているかを定期的に確認します。部下の自主性を損なわないように、上司はあくまで寄り添う姿勢で支援します。
コールセンターのタイミングでは、LDやSVのエスカレーションが、
- 指示を仰ぐ
- 相談
- 報告
と変わっていく。報告になったら任せてみよう。
評価と改善
目標達成に向けてどのような取り組みを行ったか、プロセスと結果を評価を実施する。改善につなげるフィードバックを忘れずに実施しよう。
エンパワーメント実践における注意点
エンパワーメントの実践にあたっては、次の注意点があります。
従業員の能力開発や情報・知識・スキルが必要
権限委譲しても、従業員に実践できるスキルがなければ効果はでない。実践にあたっては、従業員に情報・知識・スキルが必要であることを事前に伝え、そのための能力開発を行うことが必要だ。
ビジョンや戦略方向性の理解
エンパワーメントは、全社を挙げて行わないと成功しない。実践する前に、ビジョンや戦略の方向性について十分に理解を深めておくことが必要といえる。この設計は最も重要かつ難しいといえる。
エンパワーメントのルールの明確化
エンパワーメントでは、してはいけないこと・守るべきこと(倫理とルール)があいまいになっていると、従業員が個別の判断をしてしまい、企業にマイナスを与える可能性がある。ルールの策定は、エンパワーメントの成功において非常に重要だ。
支援環境の構築
権限委譲を行っても、慣れていない従業員は不安が大きく、力を十分に発揮できない可能性がある。そのため、気軽に相談できる制度をつくるなど環境の整備も必要だ。
そのため、以下タスクにはあまり向きません。
- 高度に数値の制度を求めらえるタスク
- 緊急性の高いタスク
- 1度限りのタスク
使い方を見極めて丸投げにならないようにしよう。
経営層・管理層と従業員の信頼関係をつくる
そもそも、経営層・管理層と従業員の間に信頼関係が成り立っていないと、エンパワーメントは実践できない。権限を委譲したら必要以上に介入せず、部下を信頼して任せる姿勢を持つことが大切だ。そのうえで、部下が困難な状態に陥っているときは適切に支援し、信頼関係を構築しましょう。
エンパワーメントの本質は、従業員の可能性を信じ支援すること
エンパワーメントは、スピードと対応力が求められる現代にマッチする考え方といえます。しかし、たんに権限委譲するだけでは業務や責任の「丸投げ」となってしまい、組織全体のパフォーマンス向上につなげることはできません。
エンパワーメントの本質は、第一に従業員の可能性を信じること、第二に従業員を十分支援することにあります。そのためには制度の構築だけでなく、従来のやり方・考え方に引きずられない意識を強く持つことが重要です。まずは経営層・管理層がエンパワーメントの本質を理解し、変革に取り組む必要があるといえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。コールセンターにおける権限移譲の重要性が理解できましたでしょうか。
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