サービスマーケティングに必須な7P分析とは?マーケティングミックスの発展を解説

過去マーケティングを実行する際に使わられていたフレームワークの中で4Pがあります。これは1960年ごろ提唱されたフレームワークで現在も使われています。内容は以下の4つを考察するというものです。
Product(製品)
Price(価格)
Place(チャネル)
Promotion(販売戦略)
しかし、マーケティング活動の対象が、有形の「物」から、無形の「サービス」へとシフトしています。
モノを販売する企業はコトやトキを提供する企業に変革を求められています。その際に使われる進化したフレームワークが7Pです。
この記事では、サービスマーケティングを行うための重要な概念として「7P」の基本を解説したうえで、特徴や具体的な活用法を紹介します。
マーケティングの「7P」とは
7Pとは、コトラーが提唱したサービスマーケティングの概念です。
言葉どおり、以下7つのPによって構成されています。
Product:製品戦略
Price:価格戦略
Place:流通戦略
Promotion:販促戦略
participants:参加者
Process:販売や業務の過程
Physical Evidence:不安を払拭するための物的証拠
現在でさえ7Pとして知られていますが、実は7Pは、4つのPがベースとなっており、残り3つのPは後から加えられたものです。
なお、バリエーションも少し変化していて、ParticipantsをPersonやPersonnel(人、要員)と呼称するケースが最近は多く感じます。また、Physical Evidenceについてもprovision for customer satisfaction(顧客満足への準備)とするケースも生まれているようです。
次章では、ベースとなった4Pと新たに加えられた3つのPについてそれぞれ詳しくご紹介いたします。
7Pのベース、4P(マーケティングミックス)とは
4Pはアメリカの経済学者エドモンド・ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱しました。
この時代は、家電製品や自動車など形のある「物」の流通が中心だった時代です。
そのため、「物を売るためにはどこに注目しなければならないか」という視点で提唱されています。
マッカーシーが唱えた4Pは、先ほど紹介したとおり以下4つのPをまとめたものです。
- Product:製品戦略
- Price:価格戦略
- Place:流通戦略
- Promotion:販促戦略
それぞれの頭文字が同じPで始まることから、4Pと名づけられました。
しかし1970年代以降、金融や旅行、飲食、情報など、形がなく目には見えないサービスが商品としての価値を持つようになってきました。
有形の物の売買でさえ、付随するサービスが比較の対象となり、それによって物が売れたり売れなかったりする時代になったのです。
サービスが比較の対象となると、同じ場所でまったく同じ物を同じ値段で売っても、サービスの違いによって売れたり売れなかったりするという事態が発生します。
つまり、4Pだけでは正しいマーケティング戦略を立てられなくなってしまいました。
7P(サービスマーケティングミックス)
コトラーは従来の4Pに以下3つのPを追加し、7Pがサービスマーケティングに有効なフレームワークとして提唱しました。
- Participantis:参加者
- Process:販売や業務の過程を表す
- Physical Evidence:不安を払拭するための物的証拠
これで現在のマーケティング7Pとなりました。
参加者を意味する「Participants」
Participantsは前述のとおり人を表すものです。具体的には次のような人を指します。
- 従業員(スタッフ)
- お客様
- 関係会社
つまり、サービスを提供する際に関係のある人を指しているのです。
お客様に提供する価値を高めるためには、従業員や関係会社、さらにはお客様自身の採用や教育、文化等も重要な要素となります。
販売や業務の過程を表す「Process」
マーケティング7PにおけるProcessは、その名のとおりサービスを提供するプロセス(過程)を指します。
お客様や自社にとって価値を提供するために最も効率的なプロセスであるかを問うものです。
宿泊サービスで例えるなら、お客様がチェックインおよびチェックアウトしやすいかどうか、ホテル内での移動がしやすいかどうかなどが該当します。
物的証拠を意味する「Physical Evidence」
マーケティング7PにおけるPhysical Evidenceは、物的証拠を意味しています。
証拠というのは、自社商品・サービスの特徴やお客様に与える価値が目に見えてわかるものです。
例えば次のようなものが野菜の製品表示や、サービスの外部機関認証などが物的証拠の例として挙げられます。
無形のサービスでは、なかなか目に見えた特徴や価値を表すのが難しいので、お客様が安心して利用できるような物的証拠が必要なのです。
サービスマーケティングの特徴
それではコトラーを軸としてマーケティングの特徴を整理します。
アメリカの経済学者フィリップ・コトラーは、サービスという目に見えないものが、顧客の購買活動に大きく影響しているということを説いた人物です。
コトラー以前の経済学では、物が売れるかどうかは、物の良し悪しや値段、立地の良し悪しなどによって決まるという考え方でした。しかしコトラーは、それらに付け加え、たとえ物自体がよくても、値段が手ごろでも、それだけでは顧客はその商品に本当の価値を見出さないということに注目したのです。
それは、マーケティングが生産物をいかに処分するかという技術ではなく、顧客の人生にとっての本当の価値を見出すための活動です。そのため顧客の生活向上に役立つ考え方でなければならないということを説きました。それまでのマーケティング理論は、商品そのものにだけ注目していたのです。
しかしコトラーは、物を売るために必要なものとしてサービスに注目し、サービス自体にも商品価値を見出しています。また、顧客のニーズに合わせてマーケティング手法を変化させるべきだと説いた点も画期的です。
いかにして顧客に物を買わせるかという戦略を立てるためのマーケティングを、顧客のニーズに合うように変えていくことは、一見顧客主導のようにも見えます。しかし、顧客のニーズを正しくつかみ、それに合わせて戦略を練るというやり方は、売る側が自分の方に顧客を引き寄せることです。決して顧客主導ではありません。
有形無形に関わらず、あらゆる商品を対象に戦略を立てられるのが、コトラーの提唱したサービスマーケティングの特徴です。
サービスの4つの特性とは何か?
コトラーが提唱したマーケティング7Pは、無形の商品およびサービスの特性を考慮して作り上げられています。
それでは、コトラーが定義したサービスの特性とは何でしょうか?
それぞれご紹介いたします。
無形性(intangibility)
企業がお客様に対して提供するものは、製品・サービスです。
製品には形がありますが、サービスには形がありません。
このように、サービスには形がないという特性を表しているのが無形性(intangibility)です。
Physical Evidence(物的証拠)にあるように、可能な限り品質などを見える化することは、お客様が安心してサービスを利用するために重要です。
同時性(simultaneity)
同時性とは、生産と消費が同時に起こるという性質を表すものです。
ホテルもテーマパークも、営業時間外にサービスの提供は行われません。
また、距離と人員数の制約も考慮すべきです。
サービスは「その場」で「人が」提供するものが多いためです。
サービスを提供するにも距離的制約と人員数の制約があるため、少ない人員でも多くの消費者に対応できる仕組みづくりなどを意識すべきでしょう。
消滅性(perishability)
サービスは貯めることができず、提供している間はサービスが消費し続けるという性質を表しています。
例えば、自動車製造業では製造した自動車を保存しておけます。
しかしホテル業では、営業時間になると部屋を提供するサービスは提供し続けており、お客様が宿泊しなければ消滅してしまうのです。
自動車製造業は月末31日に100台売れれば100台 分の売上を得られますが、ホテル業は月末にしか宿泊客が来なければそれまでの売上は得られないのです。
このように、消滅性は貯めることができず、提供すると消滅してしまうという性質を表しています。
変動性(heterogeneity)
変動性とは、サービスが提供する価値が変動するという性質を示すものです。
有形物を提供する自動車製造業の場合、製造管理によって出来上がった自動車は同じ機能を消費者に提供しています。
一方、スポーツ教室というサービスの場合、指導するスタッフやお客様によってまったく同一の価値を提供することにはなりません。
このように、無形のサービスは提供する価値が変動するという性質(変動性)を持っているのです。
マーケティングミックスの7Pの手法と事例
Product | コンセプトに合ったキャラクターを提供 |
---|---|
Price | サービス内容に見合った入場料や施設の利用料 |
Place | 多くの人が日帰りできる場所 |
Promotion | サービスの提供方法や定期的なイベント |
Participants(Person) | スタッフの教育 |
Process | お客様によって提供サービスを柔軟に変更する |
Physical Evidence | 施設設計や点検などでお客様に安心して利用してもらう |
7Pだけでは足りない!補完するスキル「4C」
有形無形を問わず、物やサービスの売買は、売り手と買い手の意思が一致して初めて成立します。
7Pは顧客のニーズによって変化させるものとはいえ、物やサービスを供給する側の視点で考えられたフレームワークです。7Pによって売り手が起こしたアクションを実際の購買行動に結びつけるためには、買い手側の視点も必要になります。
そこで提唱されたのが、顧客視点に立つ4Cという考え方です。
4Cとは
4Cは、アメリカの経済学者ロバート・ローターボーンが1993年に提唱しました。
4Pや7Pのような企業側が売り込むプロダクトアウトの考え方ではなく、顧客のニーズから購買行動が始まるマーケットインの考え方である点が特徴です。
4Cと呼ばれるのは、4P・7P同様、4つのキーワードの頭文字が共通している点が関係しています。
4つのCは、以下4つを指します。
Customer value:顧客価値
Cost:顧客が支払う金額
Communication:関係性を構築する
Convenience:利便性
Customer valueはProductと、CostはPriceと、CommunicationはPromotionと、ConvenienceはPlaceと対称の関係にあります。
このことから、4P・7Pと4Cがいかに密接な関係にあるかということがわかるはずです。
7Pがきちんと実行されれば、自然と4Cにも対応することになります。
顧客に満足感を与えられるサービスとはどのようなものかをよく考え、戦略的に活かしましょう。
まとめ
7Pや4Cを活用したマーケティングの重要性は理解できたと思います。問題はこれをどのように活用するかだと思います。
私が担当しているコンタクトセンターでは、顧客からの問い合わせに対する処理(解決や案内)を生産物としてカウントするサービスです、これを7Pや4Cの視点から再構築すると単なるコスト部門からの脱却が可能になると思います。具体的にはコミュニケーションを一つのプロモーションとあわせて新製品の案内をいれるとかは当然、商品開発に関するアンケートをとったりと良質な定性データを取得することが可能になります。